外国のマンションを売って利益が出なくても課税される場合

執筆者小嶋 晃弘

◆国際基督教大学卒、大阪府立大学大学院経済学研究科修了。税理士、MBA、宅地建物取引士。国際営業、経理、労務、採用、人事、IT管理など幅広い分野での実務経験があります。 ◆税理士の顧問サービスの他、企業オーナーや個人事業主に対して資産運用コンサルティングや税務サポートを提供。金融教育の重要性を感じ、税務関連の執筆活動にも取り組んでおり、税務に関する書籍や記事を執筆しています。 ◆プライベートでは、2人の男の子の父。趣味は水泳、読書、カメラ、アニメで、休日には息子たちと一緒に自然を楽しんでいます。

2025年10月1日

2025年10月1日

日本以外に資産を持って、日本に来ている場合があります。例えば、 結婚して日本に住もうと考えた場合に、アメリカに不動産があるような場合です。 日本に10年以上住んでから、資産を売却しようとする場合に、利益が出ていなくても所得税を納める場合があります。

税額計算したときにびっくりする場合があるので、タイミングなどきっちり注意する必要があるでしょう。

日本の所得税では、日本円で計算をする

日本以外から、日本に来て生活をしていると、外国通貨を持っているだけという考えを持ちがちです。
しかし、日本の所得税の計算においては、基本的に日本円で利益を計算することになります。

実際には、どうなるのでしょうか。

10万ドルのマンションを10年前に買って、今年売却した。売却額は10万ドルだった。儲けは出なかったから、納税する必要はないかなと。

こんな発想はあるかもしれません。

しかし、為替をよくよく見る必要があります。

10年前の為替が120円、今年の為替が150円としましょう。

  • 売却価額:100,000ドルx150円=15,000,000円
  • 購入価額:100,000ドルx120円=12,000,000円

300万円の利益が出ていますね。この金額は課税の対象です。

一般の方の肌感覚とかなり違うので、気をつける必要があります。

法的な根拠

所得税法を見ると、こちらに法的な根拠があります。

(所得税法 第57条の3 外貨建取引の換算)

居住者が、外貨建取引を行つた場合には、当該外貨建取引の金額の円換算額は当該外貨建取引を行つた時における外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額を計算するものとする。

読みにくい方のためにマーカーをつけておきました。

要するに、取引した時点で円に直してくださいねということです。

一般的には、利益をドルに換算したくなります。

例えば、こうです。

  • (100,000ドル-100,000ドル)x150円

しかし、このやり方は明確に否定されますので、ご注意が必要です。

円安傾向に注意が必要

2025年から10年前を見ると為替が120円くらいで推移しています。

そして、2025年は150円くらいです。

なので、今回のように課税がされる事例が出て来やすいです。
知っていれば、回避できる部分ですので、円建てでいくら持っているかをしっかりと把握するようにしておきましょう。

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