日本にある法人が非居住者に支払う翻訳料に源泉徴収が必要か?

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執筆者小嶋 晃弘

◆国際基督教大学卒、大阪府立大学大学院経済学研究科修了。税理士、MBA、宅地建物取引士。国際営業、経理、労務、採用、人事、IT管理など幅広い分野での実務経験があります。 ◆税理士の顧問サービスの他、企業オーナーや個人事業主に対して資産運用コンサルティングや税務サポートを提供。金融教育の重要性を感じ、税務関連の執筆活動にも取り組んでおり、税務に関する書籍や記事を執筆しています。 ◆プライベートでは、2人の男の子の父。趣味は水泳、読書、カメラ、アニメで、休日には息子たちと一緒に自然を楽しんでいます。

2023年4月11日

2023年11月8日

こんにちは。今回のブログでは、「日本にある法人が非居住者に支払う翻訳料に源泉徴収が必要か?」というお題について掘り下げてみたいと思います。翻訳業務は、グローバル化が進む現代社会において欠かせない分野の一つであり、その対象となる作品も多岐にわたっています。しかし、支払う側・受け取る側ともに国籍・居住地が異なる場合、税務手続きに関する問題も発生してきます。本記事では、日本国内で翻訳業務を行う法人の責務や注意点を解説しながら、翻訳料に関する源泉徴収の必要性や方法についてもご紹介していきます。

支払金額についての所得税の源泉徴収に必要性

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支払金額についての所得税の源泉徴収が必要な場合があります。それは、日本にある法人が非居住者に支払う翻訳料などの報酬に対してです。この源泉徴収というのは、報酬の対価となる所得税を事前に納める方法です。その額は報酬額の一定割合として決められています。翻訳物は、二次的著作物に当たるため、これらも同様に源泉徴収の対象となります。非居住者に翻訳を依頼する場合は、著作物が使用される場所によって国内源泉所得の判定が行われます。日本から非居住者に支払いをするということで、源泉徴収が必要です。ですから、外国法人や非居住者への支払いにおいても同様です。

なお、各国との租税条約の定め方によって取扱いが異なります。税務上の原則的な基準を正確に把握した上で、源泉徴収が必要な場合は忘れずに行いましょう。

翻訳における二次的著作物とは?

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翻訳された論文などの内容は、原著作物を元にしています。そのため、翻訳文は二次的著作物とされます。日本の著作権法によれば、二次的著作物は元の著作物の権利者から使用許諾を受ける必要があります。許可を受けない場合は、著作権侵害に当たります。

二次的著作物という名前が仰々しいので分かりにくいかもしれません。翻訳するということ自体二次的著作物に当たる可能性が高いと理解しておきましょう。

源泉徴収の必要性

日本にある企業が非居住者に翻訳を依頼した場合、その対価に対しては所得税の源泉徴収が必要となります。翻訳文は二次的著作物として扱われるため、非居住者に支払う翻訳料には必ず源泉徴収が課せられます。各国との租税条約の定め方によっては取扱いが異なりますが、まずは原則を理解いましょう。

日本にある企業が海外在住の非居住者に翻訳を依頼する場合、その報酬は「国内源泉所得」の対象となります。この場合、会社側は20.42%の源泉徴収を行わなければなりません。そして、源泉徴収された税金は支払月の翌月10日までに税務署に納付しなければなりません。企業が源泉徴収義務を果たさなかった場合は、後で納付を要求されます。その場合には、延滞税がかかってきます。実質の罰則ですね。

もう一つ問題なのは、源泉徴収ということは、外国の企業に支払いをする際に控除をしておかないといけないということです。後から、お金を外国の企業から返してもらうことは、実際にはハードルが高いです。送金手数料もかかります。泣き寝入りになると、支払い側がそのすべてを負担するという場合も考えられます。注意しましょう。

非居住者や外国法人の場合の源泉徴収に求められる主な税率

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非居住者や外国法人に対する日本の所得税の課税対象は、国内源泉所得とされています。このため、日本国内で源泉徴収が必要となります。非居住者や外国法人に対する源泉徴収税率については、図表12-3にまとめられています。

源泉徴収の対象となる国内源泉所得とその税率は、次のとおりです。

  1. 民法に規定する組合契約等に基づいて恒久的施設を通じて行う事業から生じる利益でその契約に基づいて配分を受けるもの:20.42%
  2. 土地等の譲渡対価:10.21%(ただし、土地等の譲渡対価が1億円以下で、その土地等を自己またはその親族の居住の用に供するために譲り受けた個人から支払われるものについては、源泉徴収は不要です。)
  3. 人的役務の提供事業の対価:20.42%
  4. 不動産の賃貸料等:20.42%(ただし、不動産等の賃貸料で、自己またはその親族の居住の用に供するために借り受けた個人から支払われるものについては、源泉徴収は不要です。)
  5. 利子等:15.315%
  6. 配当等
    • イ 上場株式等の配当等:15.315%
      • (注1) 発行済株式または出資の総数または総額の3%以上に相当する数または金額の株式または出資を有する非居住者が支払を受ける上場株式等の配当等は除きます。
      • (注2) 上記の「上場株式等」には、公募証券投資信託(公社債投資信託および特定株式投資信託を除きます。)の受益権および特定投資法人の投資口も含まれます。
    • ロ 私募公社債等運用投資信託等の収益の分配:15.315%
    • ハ イおよびロ以外の配当等:20.42%
  7. 貸付金の利子:20.42%
  8. 工業所有権、著作権等の使用料等:20.42%
  9. 給与その他人的役務の提供に対する報酬、退職手当等:20.42%
  10. 公的年金等:20.42%(支払われる年金の額から50,000円(年齢65歳以上の場合は95,000円)に年金の額に係る月数を乗じた金額を控除した金額に税率を乗じます。)
  11. 事業の広告宣伝のための賞金:20.42%(支払う金額から50万円を控除した金額に税率を乗じます。)
  12. 生命保険契約に基づく年金等:20.42%(払い込まれた保険料または掛金のうち、支払われる年金の額に対応する部分の金額を控除した金額に税率を乗じます。)
  13. 定期積金の給付補てん金等:15.315%
  14. 匿名組合契約等に基づく利益の分配:20.42%

各国との租税条約の定め方による取扱いの違い

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各国との租税条約の定め方による取扱いの違いについて考えると、非居住者等に支払いを行う際には、その居住地国と日本との間に租税条約が締結されている場合、その租税条約で定められている税率(限度税率)に基づいて源泉徴収の軽減が可能です。一つ一つ確認をする必要があります。例を見てみましょう。

例えば、支払い相手がイギリスの居住者とします。この場合、租税条約の定めで、他の動産と同様な取り扱いで免税にすることが可能です。ただし、所定の手続きが必要なので注意をしましょう。

次に、韓国の居住者に対しての場合、著作権の使用料と同様に、債務者主義によって課税がされます。今回場合、債務者は、依頼をした日本側と考えると、支払いのときに20.42%の源泉徴収が必要です。

このように、同じ取引であっても処理が異なってくることがあります。気をつけましょう。

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