経営管理ビザと役員報酬|意外と難しい役員報酬設定の落とし穴

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執筆者小嶋 晃弘

◆国際基督教大学卒、大阪府立大学大学院経済学研究科修了。税理士、MBA、宅地建物取引士。国際営業、経理、労務、採用、人事、IT管理など幅広い分野での実務経験があります。 ◆税理士の顧問サービスの他、企業オーナーや個人事業主に対して資産運用コンサルティングや税務サポートを提供。金融教育の重要性を感じ、税務関連の執筆活動にも取り組んでおり、税務に関する書籍や記事を執筆しています。 ◆プライベートでは、2人の男の子の父。趣味は水泳、読書、カメラ、アニメで、休日には息子たちと一緒に自然を楽しんでいます。

2025年12月16日

2025年12月16日

経営管理ビザと報酬の受け取り

経営管理ビザで、日本で報酬をもらう際には注意が必要です。
行政書士の方に指導をもらう場合には、必ずビザがおりてから給与もらうように言われるはずです。

これは、労働者保護の観点から、ビザがないまま日本にいて就労をする、給与をもらうことについて制限を課しているからです。

この制限がなければ、無尽蔵に日本で働いて、給料を受け取ることができてしまいます。
そうすると、日本の中で働いてる方(日本人、日本人以外も含む)に対して、給与を下げるような圧力が働いてしまいます。

労働市場として良くないものになってしまうため、このような制限がされます。
しかし、会社で役員として働く場合には、その給与支払い時期と合わせることにかなり注意が必要です。
そうでなければ、役員給与にもかかわらず、会社の費用として認められなくなってしまいます。

役員報酬と会社の損金経理の基本:定期同額給与

役員報酬として、会社の経費に認められるのは、3つしかありません。
それは、定期同額給与と、事前確定届出給与と、業績連動給与です。

この3つに該当しなければ、役員に報酬として支払ったとしても、会社の経費に認められなくなってしまいます。

今回は、定期同額給与について見ていきましょう。

定期同額給与とは

定期同額給与とは、毎月一定の時期に同じ金額を払う給与です。
日本の労働法で、給与自体は1月以下の期間に対して支払うことになっています。
そのため、定期同額ということは、毎月給与同額で支払うという意味になるでしょう。
現物給与も含みます。

この金額が途中で変わってしまうと、定期同額給与でなくなってしまいます。

例えば、毎月200,000円を払っていて、それを250,000円に変えた場合、定期同額ではなくなってしまいます。
この場合、差額の50,000円については、会社の経費として認められなくなります。

利益操作をさせない仕組み

このような仕組みになっている理由は、会社の利益操作をさせないためです。

例えば儲かっている企業が、法人税を回避したいという欲求から、役員給与を最後の月だけ1億円に変えます。
これにより、決算時には課税利益が1億円下がることになります。

このような操作をさせないために、定期同額給与の制度があります。

認められる臨時改定

しかし、都度都度、利益参入を否定されてしまうと正常な運転もできなくなってしまいます。
そのため、例外の規定があります。

例えば、事業年度開始以後3ヶ月以内の改定であれば、その改定時の金額を定期同額として認めるものです。
先ほど250,000円に変更した役員給与ですが、事業年度開始して3ヶ月以内の改訂であれば認められるのです。

これは、決算が終了した後の株主総会や役員会議が、2ヶ月以内に行われ、それから1月以内の翌月から新たな役員に改善されることに合わせたような制度になっています。

また、業績がとても悪化してしまった場合に、役員給与にとして損が認められないところが出てしまうと、これも困ります。業績が悪化したことにより改定する場合には認められるケースがあります。

ビザ・登記・給与タイミングに注意しよう

通常の変更であれば、臨時改定の方法により認められるでしょう。
しかし、困るのは、ビザの問題です。

役員として登記して、そして経営管理ビザなどで入国をする場合に、すぐさまビザが降りる事は稀です。
そうすると、役員への給与支給が、事業年度開始以後半年経過しているということはざらにあります。

そのため、役員給与とビザの承認が降りる時期の関係は、注意が必要です。
気をつけておきましょう。

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