契約締結の自由
日本において、契約は自由に締結することができます。
(契約の締結及び内容の自由)
民法521条
第521条 何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約をするかどうかを自由に決定することができる。
2 契約の当事者は、法令の制限内において、契約の内容を自由に決定することができる。
経営をしている方と話すと、「自由契約」を主張されることがあります。
大きな原則なので、間違いを否定しにくいところです。
ただ、原則は原則であり、他の法令の定めがあったり公序良俗違反などはダメですね。
契約締結の自由は当然すぎる原則であり、今さら強調するところではないかもしれません。
ただ、こういった私人の契約を基礎として税金の計算をしていきます。
そうすると、私人の契約の形に税金の計算が引きずられるということが出てきます。
認められる度合いにより、専門用語として「節税」「租税回避」「脱税」と区分されて議論がされます。
わかりやすいので「脱税」から考えていきましょう。
脱税とは
脱税とは、「課税要件の充足の事実を全部または一部秘匿する行為」*1とされています。
わかりやすく、消費税の納税義務を考えましょう。
「判定期間の売上が1000万円を超えたら消費税の納税義務がある」として、
「その期間の売上は990万円なんです」という状態。
納税義務があるものを隠しています。
この状態が脱税です。
適正な納税義務を負う上で、その売上を秘密にする権利があるかといえば、違うと言わざるをえないでしょう。
脱税する権利というのはおかしな表現ですが、不適切に事実を秘密にする権利があるとはいいにくいです。
ただ、こんなわかりやすい状態ばかりではありませんね。
法律に違反してはいない状態だけれども問題とされる状態があります。
節税を問題がない状態であるに対して、「租税回避」と呼ばれます。
租税回避とは
租税回避は大きくふたつに定義されます。
1 合理的または正当な理由がないのに、通常用いられない法形式を選択すること
金子宏著『租税法(第23版)』134-135頁(弘文堂、2019)。
2 租税減免規定の趣旨・目的に反するにもかかわらず、私法上の形成可能性を利用して、自己の取引をそれに充足するように仕組み、もって税負担の軽減または排除を図る行為
2として、外国税額控除がその趣旨に反して使われたとして、租税回避の認定がされたことがあります(最判平成17年12月19日民集59巻10号2964頁)。
ただ、個々の事例によって判断がされるとされています。