給与の額面、手取り、支払総額について、雇用主者は、知っておく必要があります。給与は一般的に労働者が雇われている期間や職務内容によって異なります。手取りは、給与から源泉徴収税や社会保険料などの差し引いた後、手元に入る金額です。給料を払うのが雇用主である以上、どう設定をするべきか知っておくのは大切です。この記事では、給料設定、支払額、手取り額、総支払額を中心に、これらのポイントを詳しく解説していきます。
給与の定義と種類
「給与」とは、労働者が雇用主から対価として受け取る報酬のことです。額面給与と手取り給与が存在します。額面給与は、基本給や諸手当などを含めた総支給額です。手取り給与は社会保険料や税金、積立金などを差し引いた金額です。支払いや差し引きは当然と感じるかもしれませんが、きちんと法律で決められています。
給与計算には、労働基準法第24条に基づく「賃金支払いの5原則」が適用されます。これは、労働者に対する賃金を
- 通貨で
- 直接的な形式で
- 全額を
- 毎月1回以上
- 期日を明確に設定して
支払うことを求めています。通貨には最近電子マネー払いが入りました。また現物給与の禁止、遅刻や早退・残業に対する適切な給与支払いが含まれます。例えば、「遅刻をしたから、給料半額」というのは違法になってしまいます。
労働者の生活の安定や、労働者と雇用主の公正な関係を確立するために設けられたものです。労働条件に関する基本的な原則であるため、事業主はこれらの原則を守ることが求められています。
また、給与には基本給や諸手当、ボーナスなどの種類があります。雇用主は、望むだけの高額な給与を支払うだけでは、経営がうまくいきません。事業目的に合わせて適正な給与を設定する必要があります。これには市場相場や業界慣習、従業員の能力などを考慮して決定されます。
手取りと額面の意味の違い
給与の額面と手取り額は、非常に重要な概念です。額面とは総支給額を指します。手取りとは税金や社会保険料等の控除がされた実際に受け取れる給与額を指します。
額面からは以下のものが差し引かれます。
- 税金
- 所得税
- 住民税
- 社会保険料
- 健康保険料
- (介護保険料)
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 取り決めをした控除
- (社宅の個人負担など)
これらの要素によって、手取り額は大きく変わってきます。正確な手取り額計算式を理解する必要があります。というのも、額面ではなく、手取り額を気にしている従業員というのは案外多いのです。これは、銀行に入った金額だけしか見ていないからでしょう。良し悪しではなく、そういう傾向は抑えておくべきところです。
手取り・手取り年収を計算するための式
手取り・手取り年収を計算するための式は、給与の額面から社会保険料や税金、所得控除を差し引いた金額を求めます。具体的には「手取り給与=額面給与-(社会保険料+所得税-所得控除)」の式で求めることができます。手取り年収は、手取り給与を12か月かかけて計算することによって得られます。社会保険料や税金、控除額は年々変わる場合があるので、正確な手取り・手取り年収を計算するためには、最新の情報を確認する必要があります。また、手取り年収は個人の所得によって大きく変わってくるため、自分に合った税制について知ることも重要です。
社会保険料・税金・控除額の影響
社会保険料や税金、控除額などが給与に影響を与えることは、誰でも気になるところです。これらの要素がどのように手取りに影響するのかについて、より詳しく見ていきましょう。社会保険料というのは、厚生年金保険料や健康保険料、雇用保険料のことで、毎月の給与から天引きされます。同様に、所得税や住民税も手取りに影響します。また、控除項目についても重要です。控除額が増えると手取りに影響が出ますが、その反対に控除額が少なくなると手取りも少なくなることになります。給与の手取りを理解するためには、これらの要素をカバーする必要があります。
ボーナスの手取りの計算方法
控除されるのは、社会保険料、雇用保険料、源泉所得税などです。ボーナスの手取りを計算する方法も似ています。ボーナスは賞与とも呼ばれます。手取り額を求めるには、以下の公式を用いて計算します。
ボーナスの金額 – (健康保険料+(介護保険料)+厚生年金保険料+雇用保険料+所得税)
比較しておきましょう。住民税の天引きはありません。これは、住民税が年額を出して月割で納めていくからです。では、賞与が大きくなっても住民税には関係ないのでしょうか?そんなことはありません。翌年にの住民税が上がります。ちなみに、住民税は6月から新しい額面で徴収がされます。
総支給額の確認方法
総支給額は、その月に雇用主が支払う全額です。給与明細の「総支給金額」に記載されます。転職活動で聞かれる金額ここの額面です。 総支給額を確認する方法は、給与明細に記載された金額を確認することです。銀行口座を見ても控除後の金額しかわかりません。総支給額が、手取りが支払われる前に支払われる金額であることを忘れないようにしましょう。
雇用主側の考慮事項
雇用主側は、給与を支払う上で様々な考慮事項が必要です。まずは、従業員のスキルや業績に応じた妥当な給与額を設定することが重要です。日本では、解雇をしにくい判例ができています。給与を少しずつ上げていく形で賃金設計がされていることがほとんどです。これは、やる気を出してもらう、前向きに進んでいくという側面を現しています。
給与を調整する方法もいくつかあります。例示としては役職給与です。技能が上がっても役職がなくなれば、この手当は減らして良いのです。40代、50代などの選別でこの手当を減らしていることがあります。また、取締役などの管理職になれば、基本的に残業代がなくなります。その分、ベースに乗せていることが多いですが。
従業員側は、総額見ることが多いため、残業代で給与が上がっても額面が多ければ問題ないという人がいます。その分、そういった会社では残業代の圧縮や抑制をしにくい可能性はあります。俗に言う、残業を見越して生活している状態です。
一般論として雇用主は、労働時間や残業についても、適切な時間外労働手当を支払い、過剰な残業を防止することが求められます。雇用主側は、これらの要素を総合的に考慮し、従業員のモチベーションを高めつつ、経営上の目標を達成するために給与計算を行っていくことが必要です。
雇用主側の負担を考えた給与支出額の合計
前節では、給与計算に必要な要素の一覧やボーナスの手取り計算方法について紹介しましたが、今節では給与支出における雇用主側の負担に焦点を当てます。給与支払いには、社会保障費用や労働保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など、雇用主側が負担する諸経費があります。
従業員側から控除するのと同時に、おおよそその控除額と同額を別途雇用主側も支払う必要があります。つまり、雇用主が労働者に支払う給与は、額面や手取り額とは異なり、これらの負担を考慮した結果となります。
控除額を再度確認してみます。
従業員負担 | 雇用主負担 | 負担合計 | |
---|---|---|---|
1 健康保険料率 | 5.11% | 5.11% | 10.22% |
2 介護保険料率 | 0.82% | 0.82% | 1.64% |
3 厚生年金保険料率 | 9.15% | 9.15% | 18.30% |
4 雇用保険料率 | 0.6% | 0.95% | 1.55% |
5 労災保険料率 | なし | 0.45-1.18% | 0.45-1.18% |
6 子ども・子育て拠出金 | なし | 0.36% | 0.36% |
合計 | 15.68% | 16.84%-17.5% | 32.53%-33.25% |
労災保険を0.45%して計算してみます。社会保険の費用として16.84%が給与の外にかかります。
給与額面 | 総額負担 |
300万円 | 約350万円 |
400万円 | 約467万円 |
500万円 | 約584万円 |
想像よりもかかったかもしれません。こういう負担を考えておく必要があります。
給与計算に必要な要素の一覧
給与計算に必要な要素は、基本給・各種手当・残業代・不就労控除・公的控除の5つです。基本給は、従業員の労働対価の基本となる給与です。各種手当には、家族手当や役職手当などが含まれます。残業代は、法定内または法定外の労働時間超過分に対する支払いです。不就労控除は、社員が病気やけがにより欠勤した場合に支払われる手当です。公的控除には、所得税・住民税、厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料などがあります。これらの要素を明確に把握し、正確な給与計算を行うことが必要です。特に、公的控除は雇用主にとって重要な負担となるため、適切な計算が求められます。
基本的にタイムカードが必要でしょう。タイムカードの本体を買うよりも、クラウドサービスを使うといいでしょう。ご希望があれば書きますので、別途ご連絡ください。
実残業とみなし残業のリスク対応に注意
給与計算に必要な要素の一覧には、実残業とみなし残業があります。実残業とは、実際に働いた時間を指し、みなし残業とは、あらかじめ定められた労働時間外の時間を指します。みなし残業を認めていてもそれを超えていると、従業員が実際に働いた時間以上に残業代を支払う必要があります。労働基準監督署の監査が入ると、みなし残業について指摘されることが多いでしょう。また、タイムカードを導入していない場合にも、実態の把握をスマホやメールの記録から調べて、追加の残業代の請求をされる可能性があります。
適切な管理をしておきましょう。同時に、認められない残業をしない、許可をあらかじめとってもらうように従業員にも理解してもらうことが大切です。全体の労働環境の改善に向けて、会社と従業員が協力し、残業のリスク対応に注意することが必要です。