保育料・ベビーシッター代は、個人事業主の経費にならない?

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執筆者小嶋 晃弘

◆国際基督教大学卒、大阪府立大学大学院経済学研究科修了。税理士、MBA、宅地建物取引士。国際営業、経理、労務、採用、人事、IT管理など幅広い分野での実務経験があります。 ◆税理士の顧問サービスの他、企業オーナーや個人事業主に対して資産運用コンサルティングや税務サポートを提供。金融教育の重要性を感じ、税務関連の執筆活動にも取り組んでおり、税務に関する書籍や記事を執筆しています。 ◆プライベートでは、2人の男の子の父。趣味は水泳、読書、カメラ、アニメで、休日には息子たちと一緒に自然を楽しんでいます。

2023年4月5日

一人でビジネスを営む個人事業主にとって、経費の計算は大変な作業です。特に、ベビーシッターや保育士を雇っている場合、その費用が本当に経費として認められるのか疑問に思うこともあるでしょう。このブログでは、個人事業主がベビーシッター・保育の税務の費用性を考える上で、知っておきたいことを解説します。

ベビーシッター代や保育料が経費になるの?

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ベビーシッター代や保育料が経費になるのか、個人事業主やフリーランスの方々にとっては気になるところです。現在の税法の枠組みでは、保育料やベビーシッター代は家事費として認定され、仕事の経費として認められません。しかし、実際には子育て主婦が働くために必要な経費とも言えます。

「保育費用を支出しなければ働きに行けない」

税法上はどうかおいておいても、上記の状況を想像したことがある人は多いでしょう。少子化対策や女性の社会進出の両立に向けたシッターの活用について更なる議論が必要とされます。ただし、女性の社会進出を主たる理由として補助をすると、女性に子どもの面倒を見るという役割を押し付けることになります。現実問題として、男女に関わらず子どもの面倒を見ていることが増えている側面はあります。

また、子どもを持たない人からずれば、公平性を担保している経費の認められ方とはいえないかもしれません。

個人事業主保育料・ベビーシッター代を経費として認められない理由とは?

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基本的理由

個人事業主がベビーシッター代を経費として認められない理由は、主に子育てや保育がプライベートなことであるため、「事業の直接的なコストではない」という考えからです。経費は、事業を行う上で直接関係のあり、必要不可欠な費用として認められますが、ベビーシッター代は直接的でなく、経費として認められるのは難しいとされています。

そもそも、日本ではあまりベビーシッター代を必要経費にするという主張が多くないようです。そのためか、サラリーマンが特別に費用として認めていい項目(特定支出)としても話題に出てきません。

なかりせば理論は誤解を生む

なかりせば理論を使って説明されることがあります。しかし、私は推奨しません。専門家には理論が通っているように見えるのですが、一般の人には通らない可能性があります。また、誤解を生みやすいからです。ちなみに、なかりせば理論は以下の2つを充たす支出を考えます。それが事業所得の費用となる考え方です。

  1. 仕事をするためにはその支出が必須である
  2. 仕事をしなければ、その支出をする必要がある

「仕事をしなければ、ベビーシッターに預ける必要はなかった」=「必要経費」と読む個人事業主の方もいるはずです。しかし、現実はそうなりません。日本の裁判ではあまり争点になっていないので、この点については米国の判例を確認します。

個人事業主の従業員であれば経費として認められる?

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では、従業員に対して支出すれば必要経費となるでしょうか。変かもしれませんが、必要経費になる可能性があります。第三者の方に給与を出すことを原則として考えると、待遇の補填という意味で福利厚生費に近い考え方になります。

経費に算入できるのだからいいと感じるかもしれません。しかし、どうでしょう、この支出を途中でやめるわけにもいきませんし、そもそもあなたが経営者だったときにこのように給与をどんどん高めていきたいと考えるでしょうか。そうはなりにくいです。

なお、つきつめると微妙なところがあります。外部の福利厚生サービスに加入してベビーシッター代の割引券を渡す方法もあるからです。そこまでして税金を減らすというのは、本末転倒になりそうですが。。

会社であれば経費として認められる?

個人事業主 保育料

会社であれば、従業員のために支出した保育費は、経費として認められる場合があります。ただし、企業ですから、無尽蔵に費用の負担を認めるという場合があるのかは疑問です。企業内託児所を設置していて、補助が出るとしても、企業側に足がですにきちんと運営できるかはあやしいところです。

企業側から持ち出しになった際にそれが、費用になるからうれしいなんていい方を聞いたことはありません。結局、給料の上乗せのような性質を持ち、福利厚生費としての支出となると考えられます。

個人事業主とのバランスがおかしいと感じるでしょうか?同列に並べて論じにくい点でしょう。

公平性は担保するべき

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個人事業主の場合にはそういった制度は適用されず、保育費は個人的な家事費として扱われるため、経費として認められません。公平性を考えるなら、個人事業主に対する保育費控除制度の導入も検討されるべきといえるかもしれません。

ただし、もう少し突き詰めると個人事業主の方がサラリーマンよりも融通を効かせて行動できたり、個人商店の合間に置いておくことが可能であったという現実も出てきます。費用として認めるのはいいのかもしれませんが、一方で課税の公平性とは子どもを持たない人や他の職業の人ともの公平性を見る必要が出てきます。論文が書けてしまうくらいの論点です。

米国の参考判例

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少しだけ議論を深めるために米国の判例を確認してみましょう。Smith v. Commisioner, 40 B.T.A. 1038(1939), aff’d per curiam, 113 F.2d 114 (2dCir.1940).で確認します。

事案

共働きの家庭の妻が働きに出る際に、夫が外で働いているため子どもを預けなければ働きに出ることができない状態だった。このときのベビーシッター代は、事業に必要な経費だという主張だった。ベビーシッター代を払わなければ、事業に携わることができず、事業に必要な経費だった。このように自由でなければ、仕事を求めることもできない(なかりせば理論)。だから、事業の経費にするべき

判旨

保育費を事業経費として控除できない。理由として

  1. このような費用の認められ方をすれば、病院にいかなければ事業に携われないなど、多用な費用を算入することになる
  2. ベビーシッターを雇うことを禁止しているわけでもない。なぜそのコストが控除項目として相殺される性質を持つのか不明瞭
  3. 収入との関係性に関して無頓着になる気はない。俳優の衣装などを例にするとその関係性から一般的に線引ができないところも多々ある。しかし、一般的に当てはまる性質の費用ではない

検討

上記の理由よりも、山田麻未 名古屋経済大学法学部准教授の下記の説明の方が分かりやすいかもしれません。

すなわち、租税訴願庁は、妻が家事労働と収入獲得活動(自宅外での役務提供)の両方の活動に従事していると捉えたうえで、保育費は、専業主婦であった頃よりも不十分になった家事活動を補う支出と考えられるので、家事労働に関連する費用すなわち個人的支出であると判断したと考えられる。

山田麻未「保育費の控除可能性についての一考察」税法学579号161-162頁(2018)。

まとめ

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個人事業主が保育費を必要経費に算入できる可能性は低いです。従業員に対しての保育費の負担や補助については必要経費になるかもしれませんが、税負担の軽減よりも事業負担の増加の方が大きいです。それは、企業で考える場合にも同様のことがいえるでしょう。

また、個人事業主にとどまらず税負担の軽減ということであれば16歳未満の扶養控除を設定する方法があるかもしれません。今の制度が完璧とはいいにくい点もあり、改善が出てくる可能性があります。

経営を考える上で、参考にしてみてください。

大阪 税理士 個人事業主中小企業などの対応が可能です。
細かな制度設計や相談などをご希望の場合は、顧問契約の他に単発相談も利用可能です。

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