世界各地で観光業が盛んな国々が、ワーケーションを促進するために所得税優遇策を争っていることをご存知でしょうか?日本ではあまり話題に上らないかもしれません。日本では、国をまたぐ政策としてではなく、都道府県をまたぐ政策として認識されている傾向があります。
しかし、諸外国を見ると異なっています。これは、外国人がその国で働くことを条件に、一定期間の滞在期間中、所得税が免除されるなどの優遇措置を用意し、働きながら観光も楽しめる新たな旅行スタイルを提案している例が存在しています。コロナ禍で影響を受けた観光業を支える政策として、EUなど国境をまたぎやすい国では、このような政策が取られ始めています。
これにより、観光立国はもちろんのこと、働き手にとっても魅力的なワーケーション先になることが期待されています。そこで、今回のブログでは世界のワーケーションニュースを取り上げ、所得税優遇が実施されている国々とその内容について紹介します。
テレワーク浸透による新たな旅の可能性:ワーケーション
近年、テレワークがますます浸透する中、新たな旅のスタイルとして注目されているのがワーケーションです。これは、勤務地にとらわれず、普段の職場や自宅から離れて仕事をしながら、私たち自身の時間も楽しむことができる滞在型旅行です。このような働き方が可能となると、日常とは違った観光や文化に触れ、新しい気付きや学び、交流が得られることから、働き方や地域の活性化にも繋がるとされています。
ただし、定型的な仕事の場合は、費用の対応を認めるのが難しいのが日本の税法では存在します。例えば、ハワイに旅行に行って商談を行うとします。家族の費用は、個人の事業所得の経費に認められるかといえば、NOです。また、現地の休日に観光をする費用も、個人の事業所得の経費にはならないと考えられます。
日本では、勝手な所得税の圧縮を避けさせようという所得税などの体系が存在するためです。また、日本での旅行スタイルは、休暇を特定の時期に一斉に取得することや、滞在日数が短いことなどの特徴があります。その意味で、仕事と旅行を合わせる近年の形態は、とても新しいといえるでしょう。そのため、解釈上うまくはまっていないように見えます。
ワーケーションに向かない日本の観光スタイルの課題
ワーケーションが広がる中で、日本の観光スタイルにも変化が求められています。従来の日本の旅行スタイルは、特定の時期に一斉に休暇を取得する、宿泊日数が短いといった特徴があり、このため旅行需要が特定の時期や場所に集中しやすい傾向にあります。例えば、ゴールデンウィークや夏休み、年末年始などの盆栽時期になると、観光地や交通機関が混雑し、ゆったりとした旅やリフレッシュが難しくなることが課題となっています。
また、これらの時期は、観光地や交通機関の混雑が原因で感染症の拡大防止が難しくなることも問題となっています。感染症の拡大を防止するためには混雑を避ける必要があります。
結果として、ワーケーションが出てくるのは必須なことでしょう。
ワーケーションとは何か?観光庁の説明
観光庁は、ワーケーションを「余暇を楽しみつつ仕事をする」と定義しています。
これに対して、ブレジャー(Business + Leisure)という言葉もあります。こちらは、出張に行った際にその後の滞在を延長して遊ぶことです。
発想はいいのですが、実際に観光庁の人に十分これを行ってほしいところではあります。日本の税制から考えると、ちょっと境界線をひきにくいです。私が社長や企業の担当者であれば、ワーケーションを積極的には取り入れにくいです。福利厚生の一貫としては一縷の可能性があるかもしれません。しかし、本筋の積極利用には難しそうです。
ワーケーション制度導入企業向けの導入検討例
ワーケーションを取り入れる企業の一つの目的として、有給休暇の取得率向上を挙げています。
ここも日本特有の課題です。有給を自由に取れないということが、この政策からは透けて見えます。しかし、どんな理由であれ休みを多くもらえるのは、労働者としてはプラスでしょう。採用面や福利厚生面でプラスにできる可能性があります。
ただし、「有給休暇」と「休みをあげるという意識」はあまり相性が良くないので、有給休暇取得改善に悩む社長や取締役の方々の悩みは尽きません。この辺りの理解を促進することを相談ですることがあります。
日本は結局国内需要の掘り起こし
日本の政策を見ると、国内需要の掘り起こしのためのワーケーションの側面が強いです。しかし、海外に目を向けると、もっと激しい方法を取っています。
それは、「私の国に滞在してテレワークの仕事をしてください。滞在中の所得税を免除します」という意識のもとの政策です。
法人税の優遇として他の国はどんなことを考えているか?
観光業に打撃を受けた国では、他の国から自国に来て滞在をしてほしいと考えます。そこで、他の国は、自国に滞在して働きませんか?という政策を出してきています。OECDからも同様の資料を見ることができます。
例示すると、日本の企業Aがギリシャに従業員を滞在させて、事業をテレワークで行なわせたとします。通常、この滞在が事業所扱いになれば、A社は法人税をギリシャで納める必要が出てきます。
しかし、テレワーク優遇、コロナの対策などから、この「事業所扱いをしませんよ」というのが多くの国で考えられた政策です。テレワークが続く限りはこの政策は、いい一手になりうるでしょう。
テレワークが減少傾向になれば、この政策は見直されるかもしれません。
「事業所扱いしない」の日本での今後の可能性
優遇措置をとって日本に滞在してもらうというのは、コロナ禍では必要なことでした。
日本の今後を考えた場合は、人口減少対策としてこの方法が生きていく可能性があります。ただし、所得や法人規模の制限を行なわないと、来た人によって地域が荒れるという可能性も否定できません。少なくとも、事業目的で来ていれば、貧困を理由にこの制度を使うという可能性は少なくできます。
現状の日本と各国の政策、また今後の思考実験として楽しんでいただければうれしいです。