相続税には、非課税の財産があります。この財産に該当するかどうかその内容によって変わります。
その中の特徴的なものとして、庭内神し(ていないしんし)があります。
これは、少し面白い点なので一緒に確認をしてみましょう。
庭内神し(ていないしんし)とは?
「庭内神し」(ていないしんし)と読みます。
間違うと、「にわうちがみし」なんて読めるのでしょうか?普段は全く使わない概念かもしれません。
庭内神しは、日本の家庭や敷地内に設けられた小さな神社や祠(ほこら)で、ご神体をまつっているものを指します。これは一般的に、家族や地域住民が日常的に礼拝を行う場所として用いられます。庭内神しは、特定の神様や仏様、あるいは祖先を祀る場合もあります。
家にある仏だんとは少し規模などが異なっています。特徴を並べてみると、
- 規模: 小規模で家庭の庭や敷地内に簡易な設備で作る
- 祀られる対象: 不動尊、地蔵尊、道祖神、庚申塔、稲荷など
- 日常の礼拝: 家族や地域住民が日常的に参拝し、お祈りやお供え物をする
日本文化の一面として存在しています。
課税逃れにならないように、きちんとどういったものが庭内神しになるかは、決まりがあります。
基本的な相続税の非課税財産
なぜ、庭内神しが非課税なのでしょう。
これは、判例が出たことが主たる理由なのですが、争いの前提として、下記のようなものが非課税だという法律があります。これらと比べて対象にならないとおかしいという判断が出たのです。
日常の信仰用具
墓地、仏壇、神具などは非課税です。ただし、投資対象や商品として持っている場合は課税されます。
公益目的の財産
宗教や慈善活動で使われる財産は非課税です。
障害者支援金
地方公共団体が支給する障害者やその扶養者への給付金は非課税です。
生命保険金
法定相続人の数×500万円までの生命保険金は非課税です。
退職手当
法定相続人の数×500万円までの退職手当や功労金は非課税です。
幼稚園の財産
特定の条件を満たす幼稚園の財産は非課税です。
寄附した財産
相続税の申告期限までに公益目的で寄附した財産や金銭は非課税です。
争いにおいて
争いの内容を見ていきましょう。
事実の概要
相続財産のうち、自宅の庭に庭内神し(実際には、弁財天及び稲いな荷りを祀まつった各祠ほこら)があり、この土地部分が相続税の計算においてこれを非課税財産とするかどうかが問題となりました。
原告がこれを不服として、主位的には本件敷地が非課税財産に当たると主張し、予備的に本件敷地は一般人が移設をためらう祠があります。そのため売却困難であるから、一定の評価減を行わなかった本件処分は相続税法第22条に違反すると主張してその取消しを求めた事案です。
争点
相続税法第12条第1項第2号に基づき、庭内神しの敷地やその附属設備が非課税財産に該当するかどうか。
判旨
資料と現況によると、本件の祠は、庭内神しに該当するところ、
- 本件各祠がコンクリート打ちの土台により固着されてその敷地となっている。また、各祠のみがあるのではなく、附属設備として石造りの鳥居や参道が設置、砂利の敷き詰めがあり、小さな神社の境内地の様相がある
- 本件各祠やその附属設備(鳥居は原告の父の代には既に存在していた。)は、設置以降、本件敷地から移設されたこともない。建立の経緯からみても、本件敷地を非課税財産とする目的でこれらの設備の建立がされたというよりは、真に日常礼拝の目的で本件各祠やその附属設備が建立されたというべきである。
- 現に日常礼拝・祭祀の利用に直接供されるなど、その機能上、本件各祠、附属設備及び本件敷地といった空間全体を使用して日常礼拝が行われているといえる(仏壇や神たな等だけが置かれていて、当該敷地全体や当該家屋部分全体が祖先祭祀や日常礼拝の利用に直接供されていない単なる仏間のようなものとは異なるといる)
以上から、本件敷地は、本件非課税規定にいう「これらに準ずるもの」に該当するということができる。
結論
庭内神しの敷地やその附属設備が相続税の非課税財産に該当するかは、上記の要素を総合的に評価した結果に依存する。一概に非課税財産とは言えず、各ケースでの詳細な評価が必要である。
このまとめは一般的なガイドラインであり、具体的なケースに適用する際は専門家の意見を求めることが推奨されます。
その設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備である場合には、その敷地及び附属設備は、その設備と一体の物として相続税の非課税財産に該当します。
簡単に表現すると以下の内容となります。
庭内神しに該当するかの判断ポイント
- 設備の現状と敷地への定着
- 建立の経緯と目的
- 現在の礼拝の様子
キリスト教やイスラム教のものは?
ここでは仏教や神道の話しが主です。
判例も神道の例です。
キリスト教やイスラム教はどうなのでしょうか。
具体例として出ていないだけで、十分認められるでしょう。
祠と同等の内容として認定されれば、後は上記の判断を載せていくだけで使うことができます。
上記のような判断材料にしっかりと則っていれば、宗教に区別はありません。
しかしながら、申告時においてきちんと説明ができるようにしておかなければなりません。
後々、税額を追加されることが多い相続税です。
申告時には注意を払って評価をしていきましょう。
お困りごとがあれば、弊事務所のサービスをご利用ください。