小規模企業共済とは、個人事業主や経営者が廃業や退職時の生活資金などのために積み立てる制度の1つです。また、共済料を経費として計上することができるため、節税効果も期待できます。
今回のブログを読んで貰えると、小規模企業共済の基本的な仕組みや特徴、加入するメリットについて解説し、個人事業主や中小企業経営者の方々が制度を活用しやすくなるようお伝えします。
小規模企業共済とは何か?
「小規模企業共済制度」は、個人事業主や小さい法人の経営者・役員向けの積立制度で、退職時の生活資金などを確保することができます。掛金は全額所得控除ができるため、節税効果が期待できます。ただし、20年未満で解約をした場合に元本割れのリスクがあります。
月1万円で運用した場合の例です。
独立行政法人 中小企業基盤整備機構「共済金(解約手当金)について」(2023年3月10日最終確認)。
掛金納付年数 5年(掛金合計額:600,000円) 10年(掛金合計額:1,200,000円) 15年(掛金合計額:1,800,000円) 20年(掛金合計額:2,400,000円) 共済金A 621,400円 1,290,600円 2,011,000円 2,786,400円 共済金B 614,600円 1,260,800円 1,940,400円 2,658,800円 準共済金 600,000円 1,200,000円 1,800,000円 2,419,500円
共済金を受け取れば、退職金代わりになります。この制度を運営しているのは、独立行政法人中小企業基盤整備機構で、その役割は、中小企業や個人事業主が共済制度を活用しやすい環境を整備することです。小規模企業共済制度は、起業直後の創業期から加入できます。
誰が加入することができるのか?
小規模企業共済制度に加入することができるのは、個人事業主や小規模企業の経営者、役員などです。例えば、配偶者とともに経営している小さな店舗や、自営業者が対象となります。また、製造業や飲食店、建設業など、業種に関係なく小規模企業であれば加入可能です。ただし、公務員、大企業の経営者や役員は加入対象外となります。小規模企業共済制度は、特に個人事業主や小規模企業経営者などが退職金の準備をするために加入することが適しています。
加入者の対象業種
小規模企業共済に加入できる対象業種は、商業・工業・サービス業など幅広いものとなっています。ただし、対象となるのは常時使用する従業員が20名以下の個人事業主、会社役員、およびその共同経営者に限られます(商業・サービス業は5名以下)。
加入者は、自身の経営に関して自己責任を負い、リスクを背負っていることが条件となります。小規模企業共済は、年金制度やiDeCoと並ぶ「退職金制度」としても知られています。ただし、加入者限定の貸付もあり、事業再建にも役立てることができるため、加入資格がある場合は、検討してみる価値があります。
掛金支払いによる税金の控除について
小規模企業共済に加入することで、掛金支払いによる税金の控除が受けられます。具体的には、個人事業主が支払う掛金は、所得控除によって課税所得を減らすことができ、所得税や住民税の負担を軽減することができます。また、共済契約者には年末調整や確定申告を行うことで、掛金に対する全額の所得控除が受けられます。この制度は、中小企業経営者や個人事業主にとって節税効果が高く、特に税金負担を軽減したい場合にはおすすめの制度です。
認められている合法的な節税ですから、節税したいと考えたときに真っ先に検討するものです。
全額所得控除によるメリット
小規模企業共済は、その掛金を全額所得控除することができます。これにより、所得税や住民税の節税効果が大きくなります。また、最大で1年につき月7万円×12か月まで掛金が設定されているため、毎月の支払額を抑えつつ、節税効果を最大限に発揮することができます。そして、共済金の受け取りも一括や分割どちらも可能で、そして受け取り時にも税制メリットがあります。小規模企業共済の掛金全額が所得控除になることから、課税所得が高いほど節税効果は大きいといえます。これは、将来に備えるために、契約者の方がさまざまなメリットを受けられる、今日からおトクな制度といえます。
掛金の税制メリット
小規模企業共済に加入する際には、掛金に対する税制メリットがあります。加入者は、掛金を経営者の個人所得税の所得控除対象として全額認められるため、所得税や住民税を節約することができます。また、退職時に共済金を受け取る際にも、退職金や公的年金と同様の扱いとなるため、課税額を減らすことができます。小規模企業共済は、掛金の設定や変更が可能であり、加入者が自身のニーズに合わせて加入金額を調整することができます。加えて、小規模企業共済は廃業や退職時の生活資金として活用できるほか、経営者の退職金制度としても利用できます。全額所得控除によるメリットや事業再建にも利用可能な資金など、小規模企業共済は多くのメリットがあるため、個人事業主にとっては検討しておくことが望ましいでしょう。
掛金の設定と変更
小規模企業共済では、掛金の設定や変更が可能です。掛金は500円単位で設定し、最低1,000円から最大で7万円まで任意に変更できます。掛金は月ごとに支払われ、全額所得控除の対象として控除されます。減額については、当月の中旬までに手続きをすれば、翌月から適用されます。掛金の変更や減額は、廃業や退職時の生活資金としての共済制度を考慮しながら行われることが望まれます。また、事業再建のための資金としても共済制度を活用できます。経営者の退職金代わりとして加入することが多い小規模企業共済は、幅広い用途に活用されています。
廃業や退職時の生活資金としての共済制度
小規模企業共済制度は、廃業や退職時の生活資金としても利用できます。個人事業主や会社役員が退職や事業終了後、共済金として積み立てた資金を受け取ることができます。この共済制度のメリットは、積立金の所得控除が全額適用されることです。加入者は、積み立て額に応じた所得控除を受けることができます。この点において、小規模企業共済制度は、退職金保険など他の制度に比べて優れています。加えて、共済金は事業再建資金としても利用可能であり、経営の安定化にも役立ちます。また、共済制度加入者は低金利で事業資金を借り入れることも可能です。小規模企業共済制度は、廃業や退職後の生活の安定化や事業再建のために利用すべき制度と言えます。
経営者の退職金制度としての共済
小規模企業共済制度は、経営者や個人事業主にとって、自身の退職金準備に欠かせない制度です。共済金は、積み立てにより準備され、退職時に解約手当金として支払われます。この共済制度は、従業員に対しても原則全員加入となりますが、期間を定め雇用される従業員や短時間労働者等は除外されます。経営者が自己都合で退職する場合、退職所得控除額を差し引いた金額に対して、超過累進税率が適用されます。共済制度の加入申し込み等の手続きは、国の中小機構で行います。加入者は、納付した掛金は全額所得控除となるため、税制面でもメリットがあります。また、共済金は廃業や退職時の生活資金として利用することができ、事業再建にも役立つ資金として活用することができます。
退職金代わりとしてどのようなメリットがあるのか?
小規模企業共済は、退職金代わりとして加入することができます。1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に選択可能で、低い掛け金から始められます。
入りやすいことと、所得税の節税効果を考えて事業が安定してきた際に加入する方が多いです。個人事業主が退職金を考えるというのは、難しいです。事業が安定するまで、何も行動できなかったら、時間ばかりが過ぎて対策ができません。
また、共済制度は、中小企業基盤整備機構が運営するため、信頼性が高く、安心して加入することができます。個人事業主が加入する場合には、積立金の受取り方や一時金の支払いもありますが、共済制度を利用することで、安心して退職生活を送ることができます。
中小企業基盤整備機構の役割について
中小企業基盤整備機構は、2004年(平成16)年7月に発足した経済産業省所轄の独立行政法人です。同機構が運営する小規模企業共済制度は、個人事業主や中小企業経営者が安心して事業を展開できるようにするための制度です。同機構は、制度の運営に加えて、中小企業の経営支援や技術支援、海外展開支援など、幅広い業務を担っています。小規模企業共済制度は、中小企業基盤整備機構が提供する退職金制度として、加入者のビジネスを支援する一環として位置づけられています。同機構の役割は、中小企業が進化するための基盤づくりとなり、国内経済の発展に大きく貢献しています。
廃業や退職時の生活資金としての利用方法は?
小規模企業共済に加入すると、掛金として積み立てた資金が、廃業や退職時の生活資金として活用できます。加入者が事業を廃業する場合は、掛金全額が一時金として受け取れます。また、退職後は、一時金と年金のどちらかを選択することができます。
一時金扱いの場合、退職金は退職所得扱いになります。年金を選択した場合は、公的年金と同じく雑所得扱いです。
退職後に年金を受け取る場合は、所得税がかかりますが、適用範囲内であれば控除されます。廃業や退職時に必要な生活資金のために、小規模企業共済に加入し、積極的に資金を積み立てることが重要です。
個人事業主が知っておくべきポイントとは?
個人事業主が知っておくべきポイントをまとめましょう。
- 掛金支払いによる税金の控除ができる
- 加入することで退職金代わりとしてのメリット
- 廃業や退職時の生活資金としての利用方法も視野に入れられる
- 貸付制度あり
ただし、繰り返しになりますが、加入期間が短い場合に元本割れするデメリットもあるため、注意が必要です。
事業再建にも利用可能な資金
小規模企業共済制度は、廃業や退職時の生活資金に加え、事業再建にも利用可能な資金として活用できます。共済契約者または同居する親族の福祉向上のために必要な住宅改造資金、福祉機器購入等の資金を低金利で借入れることができます。加えて、創業転業時や新規事業展開等資金の貸付けも行われています。小規模企業共済制度への加入は、掛金が全額所得控除できるなどの税制メリットもあるため、経営者の節税対策にも役立ちます。事業再建に必要な資金をあらかじめ準備しておくことで、万が一の不測事態にも安心して対処することができるというメリットがあります。
貸付制度の特徴と利用条件について
貸付制度は、小規模企業共済加入者が必要とする資金を貸し付ける制度で、金利は比較的低めに設定されています。2023年3月時点の一般貸付の利息は1.5%です。4月末・10月末に12ヶ月以上の加入期間が必要です。
また、貸付の目的は色々あります。
制度名 | その目的 |
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一般貸付制度 | もしものときに、迅速に事業資金を借入れできます。 |
緊急経営安定貸付け | 経済環境の変化等により資金繰りが困難なときに、経営の安定を図るために事業資金を低金利で借入れできます。 |
傷病災害時貸付け | 疾病・負傷による入院や災害等により被害を受けた際に、経営の安定化のために事業資金を低金利で借入れできます。 |
福祉対応貸付け | 共済契約者または同居する親族の福祉向上のために必要な住宅改造資金、福祉機器購入等の資金を低金利で借入れできます。 |
創業転業時・新規事業展開等貸付け | 新規開業・転業する際や事業多角化の際に必要な資金を低金利で借入れできます。 |
事業承継貸付け | 事業承継(事業用資産または株式等の取得)に要する資金を低金利で借入れできます。 |
廃業準備貸付け | 個人事業の廃止または会社の解散を円滑に行うために要する資金を低金利で借入れできます。 |
いつ加入したらいいか?
いつ加入したらいいかについて考えてみましょう。
小規模企業共済は、個人事業主や中小企業の経営者・役員にとって、退職金の積立てだけでなく、税金の控除や貸付制度などのメリットもあります。加入するタイミングは、見込みが立っていれば事業開始時や創業期に積極的に利用できます。早期に加入しておくと運用期間が長くなることが理由です。
しかし、私が考える一番大切な要因は事業がある程度安定したかです。起業などの直後でなくても、数年したら少し目処が立つはず。そのときに加入を検討しましょう。事業が安定していないときに、他のことにお金を回して止まってしまうことはよくありませんから。
いずれにせよ、加入時期には個人事業主・中小企業の状況や目標、将来的な退職金の必要額などを考慮し、慎重に判断することが重要です。