個人が訴訟費用をカンパしてもらったときに、どんな税金がかかるかを考えてみます。結論を先に言えば、個人が訴訟費用をクラウドファンディングで集めた場合に、贈与税を払わなくていい可能性があります。しかし、もらったお金の取り扱いや意図から外れてしまうと、指摘され、課税される可能性があります。
最近はクラウドファンディングなどで、訴訟費用を誰かからもらうということも増えています。お金の受け渡しは簡単になりました。ただ、税金の取り扱いは、意外と複雑です。そういった複雑さを一緒に見ていきましょう。
本記事を読めば、万が一、訴訟をしないといけないときに、クラウドファンディングなどでお金を集めた際の、個人の税金の取扱いについて、大まかな理解を得られます。将来に備えて、最後まで、確認してみてください。
なお、「社会通念上」の概念を使う場合などに、「使い切ればいい」など恣意的な判断を意見されていることを散見いたします。税法の適用関係は、一般性の議論ではなく個別具体的な事案に対して判断ができるものです。関連する内容の適用に関しては、税理士等の専門家に相談することをおすすめいたします。
カンパ・募金・寄付の語彙の整理
カンパとは?
まず一番目としてカンパという言葉は「カンパニア」という言葉が語源になってます。
カンパニアはロシア語で、「政治的な目的によって組織された大衆行動」を意味する言葉です。
現在はそんな細かな語源を反映された内容になっていないです。
募金と大差がない意味で使われています。
募金・寄付とは
カンパと、募金・寄付はどう違うでしょう。
どういう風に使われているのかをちょっと確認してみます。
募金、集める側の目線からのお金の見方です。
募金を募るなどって言いますよね。
これに対して寄付はお金を渡す方の立場から見た言い方です。
寄付をするっていう風に言いますよね。
カンパ・寄付・募金に差はない
カンパを含めてどれも意味合いとしては同じです。
税金を考える上では寄付として取り扱っていきます。
言葉は色々ありますけど、税金を考える上では寄付金として考えるということです。
クラウドファンディングで集まったカンパの会計処理はどうなる?
クラウドファンディングで集まったカンパの会計処理は、一般的には寄付金として帰属します。つまり、寄付金の扱いとして、受け取ったカンパは、原則的に収入金額に含まれ、その額に応じて所得税や贈与税の支払いが必要です。訴訟文化が薄いと言われる日本社会です。訴訟を前提とした会計処理は、あまり一般的ではありません。
本記事を参考にしていただきつつ、会計処理については、事前に専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
税法における、寄付金の整理
寄付金とはなにか
寄付・カンパ・募金と、名前を色々変えましたが、税法では寄付金というくくりで考えます。
寄付金というのは、「ものやサービスをもらわず、お金だけ渡すというような状態」です。
普通の商品の購入だったら、ものをもらったからお金を渡します。
サービスをしてもらったからお金を渡します。
一方、寄付は、給付が対等でないというイメージです。
片方からお金を渡すでも何ももらわないという感じ。
これが寄付金という理解になります。
個人→個人の寄付
寄付金が。個人から個人に行く場合はどんなときでしょう。
- 家族がお金(寄付)をくれた
- サークルの仲間カンパをくれた
- クラウドファンディング
最近、増えているのはこのクラウドファンディングです。
ただ、クラウドファンディングには、色々な形があります。
選択肢としては大まかにこの3つです。
- 寄付型
- 購入型
- 投資型
それぞれの差を見ます。
型 | 特徴 |
---|---|
寄付型 | 何ももらわない |
購入型 | 商品をもらう |
投資型 | うまくいったら何かもらう |
これはそのクラウドファンディングでお金を渡したときに
このうち寄付金に当たるのは寄付型のクラウドファンディングです。
何ももらわないけれど、お金を渡すという形のクラウドファンディングだと、税法上、寄付金の取り扱いと同じになります。
法人→個人への寄付金
法人から個人が寄付をもらう場合を、考えてみましょう。
(今回は、法人や社団法人がお金をもらうのではなく、個人がお金をもらうっていうことを前提に考えています。)
ただ、法人から個人がお金をもらうっていうのはなんか不思議な状態です。
なぜ、法人が個人に寄付をするのでしょう。
第三者に対して寄付をすることがあったとしても、あまり起きないのではないでしょうか。
そんな状況が起こるのは、
- その法人の従業員
- その法人の従業員
という可能性があります。
対象を整理すれば、この3パターンがあります。
税金の取扱い
個人から個人への寄付:贈与税
個人の税金ですぐに思い浮かぶのは、所得税です。
でも、個人から個人に寄付が渡ったという場合は、所得税ではなくて贈与税がかかります。
そのすべてにかかるっていうわけではなくて、原則、その一年間110万超を合計でもらった場合にはかかります。
寄付ですから、用途は関係ありません。
ただ、クラウドファンディングでお金を集める場合に、パチンコに行くからというのではお金は集まらないですね。
何かしらの目的を持って集めるということで、クラウドファンディングでは寄付が集まります。
個人から個人への寄付に対しては、贈与税がかかる
個人から個人でも、社会通念上、税金を取らない場合
個人から個人の募金であっても、例外があります。
例えば、、「〇〇ちゃんを救う会」の募金。
また、最近あった分では、弁護士さんが大量の懲戒請求を受けた件で、クラウドファンディングで寄付を募ったものがあります。
この場合に、寄付金は税金がかかると考えると
「えっと〜、税金を差っ引いた残りで
〇〇ちゃんを救ってくださいねー」
「弁護士さんの訴訟の
対抗費用にあててくださいねー」
原則ではあっても、何かちょっとおかしい感じしますよね。
「そんなことにも税金かけるの?」
と考える人もいるでしょう。
だから、例外として社会通念上、税金かけないでおこう、非課税にしようといった考え方があります。
「〇〇ちゃんを救う会」の募金について、非課税に当たると考えられます。
今回タイトルに挙げたような、個人が訴訟を受けてその費用をまかなうために、お金を募ったということであれば、贈与税の非課税の枠にできる可能性があります
営利目的でお金をもらってるとか、自分がパチンコに行くためにお金をもらっているわけではないですので。
しかし、この場合にはちゃんと自分で証明ができることが大切です。社会通念上っていうのは、結構逃げのセリフであってこれは該当しないとか該当すると、はっきり示してくれません。
「〇〇ちゃんを救う会」の募金だけど、その募金の中から打ち上げ出していたり、旅行に行っていたらどうでしょう。
看板はそうであっても、内容は単に寄付をもらって好きなことに使ったのと変わりません。
このようにならないよう、銀行口座を分けたり、銀行口座の内容を明示できるようにしておくことが必要です。預託金扱いとして、非課税と分けようする場合があります。ここは、税金の扱いというよりも会計処理の問題です。どちらでも大丈夫と考えます。細かな話が分からない場合、やはり税理士に相談した方がいいところです。
法人→個人の寄付
法人から個人が寄付を受けた場合について考えていきます。
その法人の従業員が、寄付を受けたという場合には、賞与に当たるんじゃないかとみられることが多いです。
寄付という名目であっても、法人から何かお金をもらったとなれば、労働対価として返すということを想定することができます。
普通の給与ではない通常の給与ではないので
これは賞与として、所得税の給与所得の区分になると考えられます。
役員について、その会社から寄付をもらったという場合、役員賞与という形で所得税がかかってきます。
関係性から、所得税法ではそのような分類で考えられることが多いです。
そして、第三者に対して法人が寄付をするという場合は、その受け取った第三者の個人は所得税がかかります。
一時所得とみられることが多いです。
まとめると、
個人の関係性 | 区分 | |
従業員 | 給与所得 | |
役員 | 役員賞与 | |
第三者 | 一時所得 |
このように寄付の場合は誰から誰に渡すのかということで、その区分が変わってきます
迂回しても変わりません。
従業員に対して寄付をするんだけど、クラウドファンディングで経由して寄付しても、判断方法は同じです。
税金は、奥が深いところがあります。
支出者側、クラウドファンディングで提供した資金は経費や寄付金控除の対象になる?
個人が寄付をした場合には、経費になることがないと考えておくとよいです。事業との関連性がなければ事業所得の必要経費になりませんし、地方公共団体などでなければ、寄附金控除ができません。寄付金控除とは、個人が国や地方公共団体、公益法人、社団法人などに対して行った寄付金の金額に応じて、所得税や住民税を減税することができる制度です。寄付金控除を受けるには、相手側の立場など一定の要件があります。法人が支出した場合でも、一般寄付金の枠を確認することになるでしょう。
このようなクラウドファンディングの寄付というのは、税金を下げたいからという目的よりも、純粋応援をする意図の方が高いでしょうから、これらの取扱いになっても、気にする方は少ないでしょう。
余剰金の参考:暇空茜さん、救う会、不当懲戒請求弁護団の例
この件で最近話題なのは、暇空茜さんですね。裁判を念頭においているので、ちゃんとされていると回答をしております。上記で説明した見解と同様です。専用口座を設けてますし、弁護士や会計士がサポートに入っていると話しているので、その使途もおそらく明瞭でしょう。
国税庁は、税法に基づいて行動していますので、きちんと説明ができるようにしておくことや、説明で心配なのであれば、専門家を挟むというのはいいやり方です。
こちらは、視聴者から寄付の税金について心配された後の回答です。
なお、社会通念上の非課税の寄付を受けられるかどうかについて、剰余分の処分をどうするかは一意に方法が決まっているわけではなく、論点になりえる点です。濱田さまもここで「余剰が生じた時の可処分権は誰にあるのかという問題」として触れています。
また、会計処理と税務処理とは、似ているようで別物です。例えば使い切るまで「預り金」など別の名称で会計上呼ぶことも自由です。税務調査においても会計上どうなっているかを確認しますが、その上で税法上どう判断するかを改めて確定していきます。切り分けて考えるという点は、一般の方が分かりにくくなる一因です。
救う会において余剰金が出た場合の処分も少し困った点と考えられます。たとえば、手術のための寄付を募った件に関して、最後は他の移植を必要としている方に寄付をすると規約で決めている例があります。
余剰金が発生した場合は、他の移植を必要としている患者さんのために使います。
あおちゃんを救う会「Q&A」(2023年4月6日最終確認)。
きちんと(募金した)皆さまに納得いく形でどこかに寄付をするのかは分からないが、(使いみちは)きちんとした形で明確にしてもらいたいと伝えてあります」
また、「救う会」も余剰金が出る見込みで他の団体に寄付することなどを検討しています。
長野放送「追加3億円以上…交渉で1700万円に アメリカで心臓移植11歳男児のため募金2億5200万円 「大幅値引き」で支払い完了 父は不足見込み再募金 母「皆さまに納得いく形で明確に」」(2023年4月6日最終確認)。
不当懲戒請求弁護団のカンパについての余剰金については、他の弁護士の支援や弁護士会等への寄付をするとしています。
事件が完全に終了した際に余剰を生じたときは,同種の被害を受けた弁護士に対する支援のため,あるいは,不当な懲戒請求の手続による負担を受けた弁護士会等への寄付をするなど,弁護団において協議のうえ使用させていただくことをご了解ください。
不当懲戒請求問題弁護団「カンパの利用用途」(2023年4月6日最終確認)。
寄付なので、使用額ピッタリにコントロールできるものではないのが悩ましいところです。
まとめとして
もし、皆さんが万が一訴えられたときに、訴訟費用をカンパでもらうとなった場合には、このようにその関係性や用途によって税金のかかり方が変わってきます。
参考にしていただければ嬉しいです。