日本に住んでいなくても、日本の会社の代表取締役になれる|非居住者で取締役

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執筆者小嶋 晃弘

◆国際基督教大学卒、大阪府立大学大学院経済学研究科修了。税理士、MBA、宅地建物取引士。国際営業、経理、労務、採用、人事、IT管理など幅広い分野での実務経験があります。 ◆税理士の顧問サービスの他、企業オーナーや個人事業主に対して資産運用コンサルティングや税務サポートを提供。金融教育の重要性を感じ、税務関連の執筆活動にも取り組んでおり、税務に関する書籍や記事を執筆しています。 ◆プライベートでは、2人の男の子の父。趣味は水泳、読書、カメラ、アニメで、休日には息子たちと一緒に自然を楽しんでいます。

2024年10月2日

2024年10月2日

日本法人を設立するときに、日本に住んでいなくても役員になることができます。これは、比較的最近あった改定です。

法律改正

2015年3月16日より、日本では会社の代表取締役全員が非居住者であっても会社設立が可能になりました。この改正により、日本に住んでいない外国人や海外在住者も日本の会社の役員になれます。

以前は、内国会社の代表取締役のうち少なくとも1人は日本に住所を有している必要がありました。しかし、この要件が廃止されたことで、全ての代表取締役が非居住者であっても問題なく会社を設立できるようになっています。

ただし、非居住者が会社を設立する際には、いくつか特別な書類が必要です。例えば、印鑑証明書の代わりに署名証明書を用意する必要があります。

また、日本に来て経営を行うためには「経営・管理ビザ」などの取得が求められます。

この改正で、日本市場への参入が容易になります。国際的なビジネス展開を考える企業や個人にとって大きな利点となっています。

支店を作るか日本法人設立か

日本以外にいたまま役員になれるということで、支店を作るべきか日本法人を設立するべきか比較するべきでしょう。分かりやすく比較してみます。

項目日本法人アメリカ法人の日本支店
設立コスト高い低い
信用度高い(日本国内での信用が得やすい)低い(日本国内での信用が劣る場合がある)
税務日本国内での税務申告が必要税務が二重に課税される可能性がある
資金調達銀行融資が受けやすい親会社からの資金利用が容易
運営の複雑さ複雑(設立や運営に関する手続きが多い)比較的簡単(定款認証などが不要)
法的責任独立した法人として責任を負う親会社が責任を負う
市場アクセス日本市場への直接アクセスが容易日本市場へのアクセスは間接的

これらのポイントを考慮し、事業の目的や規模、長期的な戦略に基づいて最適な選択を行うことが重要です。

例えば、日本市場での信頼性や銀行からの融資を重視する場合は日本法人を設立した方が良いです。一方、設立コストを抑えつつ親会社との連携を重視する場合はアメリカ支店が適している可能性があります。

コストを抑えるというのは、日本法人設立の場合には、資本金が必要なのが一例です。

資金の還流方法は決めておくべき

資金をどのように、日本以外へ送るかは検討しておくべきでしょう。例えば、アメリカ法人が日本へのアプローチとして日本法人を設立した場合を考えます。

いくつかの選択肢がありますが、それぞれの方法には税務上のメリットとデメリットがあり、状況に応じて最適な方法を選ぶ必要があります。以下に主要な方法を比較した表を示します。

方法説明税務上の考慮点
配当株主に対して利益を分配する一般的な方法。日本では外国子会社配当益金不算入制度により、受け取った配当の95%が非課税となる。ただし、アメリカでの配当には源泉徴収税がかかる可能性がある。
利子親会社が子会社に貸付を行い、その利子を受け取る方法。受け取った利子は日本で課税対象となるが、アメリカでは源泉徴収税が免除されることもある(日米租税条約による)。
ロイヤルティ無形資産の使用許諾に対する対価として支払われる。ロイヤルティは日本で課税され、アメリカでも源泉徴収税が課される可能性がある。ただし、日米租税条約により軽減または免除されることもある。
自社株買い子会社が自己株式を買い戻すことで資金を還流する方法。配当と異なり、資本還元として扱われるため、特定の税務上の優遇措置がない場合もある。
棚卸資産の購入親会社から子会社へ棚卸資産の販売をしている場合に、ロイヤリティを加える。移転価格税制には注意する必要がある。

これらの方法は、それぞれ異なる税務インパクトを持ちます。

一例を挙げると、借入金の利子について、特定条件の場合には、日本で損金に入れられないことがあります。また、丁寧な条約の確認も必要です。日米租税条約によって税率が軽減されるケースも多いため、条約の適用を確認することも重要です。

信頼できる人は必要(承認) | 非居住者 代表取締役

経営上において、日本に信頼できる人が必要です。
代表取締役が日本以外にいるとして、重要事項をどのように決裁するのか気をつけましょう。

代表取締役が日本国外にいる場合でも、迅速かつ適切な意思決定を行うためには、日本に信頼できる代理人や責任者が不可欠です。信頼できる人を選定する際には、会社の方針やビジネスモデルを深く理解しているかどうか、そして日本の法律や文化に精通しているかを確認することが重要です。

このような人物がいることで、日常の経営における小さな問題から、大きな戦略的な決定に至るまで、迅速に対応できる体制が整います。また、承認プロセスを明確にし、どのような事柄を本社に報告・承認を仰ぐべきか、そして現地でどの範囲まで決定できるのかを事前に定めることで、経営上のリスクを最小限に抑えることが可能です。

信頼できる代理人がいれば、現地での法的対応や税務対応もスムーズに進み、経営の安定性が高まるでしょう。

注意すべき点として、信頼を寄せた人物が必ずしも誠実であるとは限らないという現実もあります。特に代表取締役が日本国外にいる場合、リモートです。指示をきちんとしても、実行させるという「執行」部分の管理は不可欠です。横領などの不正行為のリスクも無視できません。

そのため、信頼できる人物を選ぶ際には、単に知識やスキルだけでなく、長期間にわたる信頼性や過去の実績、倫理観も重視するべきです。定期的な監査や二重承認プロセス、必要に応じて外部の第三者によるチェックを導入することで、不正行為の抑止力を高めることができます。

監査までできなくても、二重承認は社内で簡単に取れる手法です。スピードは少し落ちますが、積極的に取り入れましょう。

所得申告が必須|非居住者 代表取締役

日本の会社の役員の給料は、日本で得た所得になります。たとえ日本の非居住者であっても、会社のある場所を所得の発生した場所と考えます。

よって、日本で確定申告が必要になります。注意をしておきましょう。

さらに、所得税の源泉徴収も必要になるため、会社側は役員報酬に対して適切に税金を控除し、税務当局に納付する必要があります。非居住者であっても、日本国内での納税義務を無視しないように注意しましょう。

また、海外で居住している場合でも、日本の所得税や住民税などの二重課税のリスクにも注意が必要です。これを回避するために、租税条約の適用を受けることができるかも検討したいところです。

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