個人事業主が知っておくべき貸倒損失の基礎知識と計上方法

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執筆者小嶋 晃弘

◆国際基督教大学卒、大阪府立大学大学院経済学研究科修了。税理士、MBA、宅地建物取引士。国際営業、経理、労務、採用、人事、IT管理など幅広い分野での実務経験があります。 ◆税理士の顧問サービスの他、企業オーナーや個人事業主に対して資産運用コンサルティングや税務サポートを提供。金融教育の重要性を感じ、税務関連の執筆活動にも取り組んでおり、税務に関する書籍や記事を執筆しています。 ◆プライベートでは、2人の男の子の父。趣味は水泳、読書、カメラ、アニメで、休日には息子たちと一緒に自然を楽しんでいます。

2024年11月14日

2024年11月15日

事業をしていると、売掛金の未回収、つまり「貸倒れ」に悩むことがあるかもしれません。特に個人事業主の場合、時間も限られ、未回収の売掛金が資金繰りに与える影響は大きくなりがちです。その対応には労力がかかり、場合によっては事業全体に悪影響が及ぶこともあります。

本記事では、貸倒れに対する対策や、貸倒損失として計上するための税務上の基準についてわかりやすく解説します。

まずは、貸倒れないようにする

まず、大切なのは、貸倒れにならないようにすることです。

ここで大切な考えは、「引き渡し」です。

例えば、雑貨を販売しているとしましょう。商品を引き渡す際に、同時にお金を受け取れば貸倒れには絶対なりません。前金であれば、同様です。

商品を渡して、その後にお金を回収すると、貸倒れの原因です。

もし商売上難しいのであれば、半分でも前金で受け取るなどしておきましょう。そうすることで、原価分の回収は可能です。

サービスは特に注意です。商品のように引き渡しを待つことができません。できる限り前受をしなければいけません。よくある例は、旅行代金です。旅行代金を払わないお客さんが来たときに、では旅行に行って受けたサービスをすべて返してくださいということは不可能です。

特に注意しましょう。

貸倒の基準

売掛金が貸倒れてしまっても、その損失が確定しないとその年の損として計上ができません。

中小企業が売掛金の未回収を損失として計上する基準は、主に以下の3つの状況に基づいています。それぞれに該当する場合、貸倒損失として処理が可能です。

「法律上」

これは、法的手続きによって債権が消滅した場合に適用されます。具体的には、以下のような状況が該当します。

  • 取引先が破産や民事再生手続きに入った場合
  • 更生計画や特別清算が認可された場合

この場合、売掛金の全額または一部が回収不能となったとき、その金額を貸倒損失として計上できます。

「事実上」

債務者の資産状況や支払い能力から見て、売掛金の全額が回収できないことが明らかになった場合に適用されます。たとえば、取引先が債務超過であり、事業改善の見込みがなく回収不能と判断されるケースです。この場合も全額を貸倒損失として計上できます。ただし、担保や保証人がいる場合は、それらの回収努力を尽くした後でなければ損失計上は認められません。

「形式上」

形式的には債務が残っているものの、実質的に回収不能とみなされる場合です。以下のような条件を満たすと適用されます。

  • 取引停止後1年以上経過しても弁済がない
  • 売掛金の回収費用がその総額を上回り、催促しても弁済がない

この場合、備忘価額(通常1円や10円)を残し、その差額を貸倒損失として計上することができます。

意外と基準に合わせるのは大変

中小企業で売掛金の未回収を損失として計上する基準は、「法律上」「事実上」「形式上」のいずれかに該当する必要があります。これらの基準を満たすことで、税務上も認められる形で貸倒損失として処理することが可能です。

しかし、実務上はなかなかこれに合わないことが多いです。担保や保証人からの回収努力なども重要な要件となりますので、それらを考慮したうえで適切な処理を行う必要があります。

結局、なかなか損にできずに、見た目上の売掛金として貸借対照表に載って残ることがあります。

基準に合わないときは売却を検討

売掛金の未回収リスクを軽減するために、ファクタリング会社に売掛債権を売却する方法があります。ファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、早期に現金化する資金調達手段です。これにより、売掛先からの支払いを待たずに資金を得ることができます。

ファクタリングの仕組み

ファクタリングには、主に以下の2つの方式があります:

2社間ファクタリング

  • 売掛債権を保有する企業とファクタリング会社の間で直接契約が行われます。
  • 取引先(売掛先)には通知されないため、取引関係に影響を与えずに資金調達が可能です。
  • 手数料は高めですが、迅速な資金調達が可能です。

3社間ファクタリング

  • 売掛債権を保有する企業、ファクタリング会社、そして取引先(売掛先)の3社で契約が行われます。
  • 取引先の同意が必要となりますが、その分手数料は低く抑えられます。

    メリット

    • 早期資金化:通常、売掛金の回収まで1~3か月かかるところを、ファクタリングを利用すれば即日から数日で現金化できます。
    • 信用情報への影響なし:融資とは異なり、借入ではないため信用情報に影響を与えません。
    • キャッシュフロー改善:未回収リスクを回避しつつ、キャッシュフローを安定させることができます。

    注意点

    手数料:2社間ファクタリングでは8~30%、3社間では1~9%程度の手数料がかかります。

    不良債権は対象外:ファクタリングは基本的に支払期日前の確定した売掛債権のみが対象であり、不良債権は扱われません。

    不良債権の買い取り

    買取業者

    サービサー(債権回収会社):不良債権を専門に買い取る企業です。サービサーは、金融機関やノンバンクから譲渡された不良債権を回収することが主な業務です。代表的な企業には、セゾンサービサーなどがあります。

    債権回収の専門会社:これらの会社は、未回収の債権を買い取り、独自のノウハウで回収を行います。売却後は、元の債権者に代わって回収活動を行います。

    手数料・買取価格

    買取価格:不良債権の買取価格は、通常、額面金額の1%~5%程度です。これは、不良債権が回収困難なリスクを反映しているため、非常に低い割合での売却となります。

    手数料:ファクタリングとは異なり、サービサーによる不良債権の買い取りでは通常「手数料」という形ではなく、買取価格が低く設定されることで実質的な手数料が反映されています。

    メリット

    損金処理:不良債権を売却すると、その金額を税務上の損金として計上でき、無税償却が可能です。

    早期現金化:回収見込みのない不良債権を早期に処分し、現金化することで財務健全性を向上させることができます。

    時間と手間の削減:自社で回収する手間やコストを省き、専門業者に任せることで効率的に処理できます。

    注意点

    買取価格が非常に低いため、本来の額面より大幅に少ない金額でしか売却できないことがデメリットです。

    このように、不良債権はサービサーなどの専門業者に売却することで早期現金化や損金処理が可能ですが、その際には買取価格が非常に低くなる点に留意する必要があります。

    まとめ

    できる限り貸倒れにならないようにしましょう。前受や同時引き渡しなどです。また、もし、貸倒れになった場合でも、税務上ですぐに損金にはできないものです。

    経営上気をつけておきましょう。

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