インボイス制度で、発行側にデータ請求書の保存義務があるか?

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執筆者小嶋 晃弘

◆国際基督教大学卒、大阪府立大学大学院経済学研究科修了。税理士、MBA、宅地建物取引士。国際営業、経理、労務、採用、人事、IT管理など幅広い分野での実務経験があります。 ◆税理士の顧問サービスの他、企業オーナーや個人事業主に対して資産運用コンサルティングや税務サポートを提供。金融教育の重要性を感じ、税務関連の執筆活動にも取り組んでおり、税務に関する書籍や記事を執筆しています。 ◆プライベートでは、2人の男の子の父。趣味は水泳、読書、カメラ、アニメで、休日には息子たちと一緒に自然を楽しんでいます。

2023年3月3日

2023年8月23日

インボイス制度で、発行側に、データで作った請求書の保存義務がありますか?

あります。紙に出力して保存するか、電子帳簿保存法に従ってデータを保存しないといけません。

以下で、詳しく説明をしていきます。

インボイス制度とは?

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インボイス制度とは、消費税に関する取引において、請求書等の発行事業者(売り手側)が発行した適格請求書の保存方式により、取引の記録を確保し、税務上の処理を円滑に行うことを目的として導入された制度です。また、インボイスに関する情報を電子化することで、取引の効率化や透明性の向上につながるとされています。

電子でやり取りする仕組みはPeppolといいます。興味がある方は、こちらの記事を読んでください。

発行事業者はインボイスを交付し、買手はその保存等を義務づけられています。2023年10月1日から、この制度が導入されることになっており、企業は適切な対応を行う必要があります。

また、買い手だけでなく発行側に保存義務はあります。

参考条文

6 適格請求書、適格簡易請求書若しくは適格返還請求書を交付し、又はこれらの書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を提供した適格請求書発行事業者は、政令で定めるところにより、これらの書類の写し又は当該電磁的記録を保存しなければならない。この場合において、当該電磁的記録の保存については、財務省令で定める方法によるものとする。

簡単に参考条文を略すると「適格請求書を交付、又は提供した事業者は、これらの書類の写し又は当該電磁的記録を保存しなければならない。」というところが根拠です。

消費税法:(適格請求書発行事業者の義務)第五十七条の四 

新しそうに見えますが、これまでも法人税法や所得税法で請求書の保存は必要だったので、紙保存としてあまり新しい点ではない印象です。

発行者の請求書の保存義務とは?

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発行者の請求書の保存義務とは、適格請求書発行事業者が交付した適格請求書の写しや電磁的記録を保存する義務です(新消法57の4⑥)。

2023年10月から導入されるインボイス制度でも、適格請求書発行事業者には請求書の控えを作成・保存する義務が課せられます。制度導入後に控えを作成・保存することが義務となります。

発行者側の請求書の保存期間は?

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インボイス制度において、発行者の請求書の保存期間は7年間です。この期間は消費税法によって定められており、データ(電磁的記録)のままで保存することも可能です。ただし、保存方法と記載事項についても法律で規定されていますので、適切な管理を行うことが必要です(後述)。発行者が保存義務を怠った場合は、税務署などの監査に対し罰則が科せられる場合があります。

特に単なる電子帳簿保存法という観点だけでなく、消費税法の適用を受ける対象として見られる可能性があります。

保存方法と記載事項について詳しく解説

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保存方法と記載事項について詳しく解説すると、発行者は適格請求書を発行する場合、原本と控えを保存する必要があります。保存期間は7年について、正確には、「その閉鎖または受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、事業者の納税地またはその事業に係る事務所等に保存」という意味です。

また、データで作った請求書について、保存方法は紙媒体とデータ保存のいずれかを選択することができます。また、適格請求書には販売品目、税率、税額、発行者の情報など、一定の記載事項が必要です。

一例を示すと、

① 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
② 課税資産の譲渡等を行った年月日
③ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等である旨)
課税資産の譲渡等の税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分して合計した金額及び適用税率
税率ごとに区分した消費税額等
⑥ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

(区分記載請求書等保存方式における請求書等の記載事項に加え、①、④及び⑤の下線部分が追加されます。)(新消法57の4①)。

下線部分が新しいところですね。
また、事業者でない場合は、⑥が省略されることがあります。

発行者が保存義務を怠った場合のリスクと対策

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発行者が保存義務を怠った場合、税務署から調査を受けるリスクがあります。電子帳簿保存法の対象が保存されていないというリスクだけではないです。消費税法は指摘が多い税目です。税務調査で、よく見られる部分であるため、保存義務を履行していないと、消費税法上の控除を認められなかったり、追徴されるリスクが出てきます。

65万円の青色申告特別控除

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青色申告特別控除で65万円の適用を受けるために、電子帳簿保存法の適用が要件として入ってきています。「または」条件です。確認をしておきましょう。

  • e-Taxによる申告
  • その年中の仕訳帳及び総勘定元帳を『優良な電子帳簿』の要件に従って備付け及び保存する

電子帳簿保存法の影響

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電子帳簿保存法の改正により、発行側は請求書等のデータ保存義務が加わりました。インボイス制度の導入に伴い、電子データでの請求書発送が当たり前になった中で、電子帳簿保存法による影響は大きいものになっています。例えば、請求書等の紙面控えを取らずに、すべて電子情報のみで保存する必要があります。

また、保存する際には真実性の確保や可視性の確保など2つの要件を満たす必要があり、その点についても注意が必要です。さらに、発行側が保存義務を怠った場合には罰則が用意されている点も注意が必要です。経理担当者はこれらの要件を把握し、正確な保存を行い、適切な対策をとることが求められています。

データで作った請求書の保管方法には、選択肢が2つあります。

選択肢

  1. 紙に印刷して保存する
  2. 電子帳簿保存法の自社作成のデータ保存(任意)の規定を適用して、データのまま保存する

ここで、データ保存をするという選択肢が出てきます。電子帳簿保存法自体は、それほど厳しく見られないと考えますが、消費税法上とのからみにおいて、厳しめにチェックされる可能性が、推測されます。気をつけて準備しましょう。

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