電子帳簿保存法2023年改正の予想と論点整理。与党の税制調査会の再検討内容

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執筆者小嶋 晃弘

◆国際基督教大学卒、大阪府立大学大学院経済学研究科修了。税理士、MBA、宅地建物取引士。国際営業、経理、労務、採用、人事、IT管理など幅広い分野での実務経験があります。 ◆税理士の顧問サービスの他、企業オーナーや個人事業主に対して資産運用コンサルティングや税務サポートを提供。金融教育の重要性を感じ、税務関連の執筆活動にも取り組んでおり、税務に関する書籍や記事を執筆しています。 ◆プライベートでは、2人の男の子の父。趣味は水泳、読書、カメラ、アニメで、休日には息子たちと一緒に自然を楽しんでいます。

2022年11月26日

2023年8月23日

2022年11月26日現在で与党の税制調査会が変更しようとしている電子帳簿保存法の案についてまとめてみます。

2022年12月中旬の税制改正大綱が出るまではどうなるか、確定ではわかりません。
フタを開けないとというところです。

ただ、関係している方も多い件なので、情報のとりまとめをいたします。

電子データの保存の義務

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電子データで領収書などを受け取ったら、そのデータを保存する義務が2022年1月から開始し、2023年12月までは準備期間として、その義務が免除されている状態でした。

検索できるように名前をつける必要がありますが、売上1000万円以下であれば検索できるようにする義務は課されていません。

電子取引を行った場合には、一定の要件の下で、その電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならないこととされています。

(注) 「電子取引」とは、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項をいいます。)の授受を電磁的方式により行う取引をいい(電子帳簿保存法2条5号)、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、インターネット上にサイトを設け、そのサイトを通じて取引情報を授受する取引等が含まれます。

電子帳簿保存法7条

改定検討の内容と予想

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税制改正大綱が出るまではっきりしませんが、2022年11月24日の日本経済新聞では、次のように報道をしています。

経理のデジタル化が遅れる企業を対象に請求書のデータを簡易保存することを条件に紙での保存も事実上、容認する。

「請求書データ管理、対応遅れの企業は紙も容認 政府検討」日本経済新聞 2022年11月24日 20:15 、(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA227KJ0S2A121C2000000/)。

どこまでを法律を変えて対応するかで度合いが変わってきます。
とりあえず、3段階の設定を仮定してみましょう。

仮定案3つ

  1. 売上1000万円以下の検索を用意しなくていい人だけ、紙の保存でOK
  2. 売上幅を広くして、5000万円や1億円など基準以下は、紙の保存でOK
  3. 基準が関係なく、紙の保存でOK

3にした場合は、完全に骨抜きで、そもそも2022年からの義務は何だったのかとなります。

1の場合は、今ある緩和を少し拡充した程度ですね。
批判をかわすための報道という可能性もあります。

会計ソフトが購入できないことをやむを得ない理由とすること(後述)が日経新聞の報道であります。
1000万円を超える売上で会計ソフトが購入できないというようには言いにくいので、この1000万円ラインを仮定しておくと、今までの法律と整合性はつきやすそうです。

もっと譲歩する場合は、5000万円や1億円売上の基準を置く2のパターンです。
インボイス制度の譲歩で、売上1億円という基準が新しく出てきました。
この基準に合わせれば1億円という可能性もあります。

来年10月に導入される消費税のインボイス制度について、政府・与党は少額取引の場合はインボイスがなくても税額控除できるようにする期限付きの特例措置を設ける方針を固めた。

〜略〜

特例措置の対象となる事業者は絞られる見通しで、年間売上高が1億円以下の事業者に限るとする案が上がっている。

筒井竜平「小規模取引、インボイスなしでも控除可能へ 政府・与党が検討」朝日新聞デジタル、2022年11月18日 21時30分。

決まるまでで気になる点

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税制改正大綱を待つしかありませんが、待つ間に気になる点をまとめてみます。

紙で保存できる「相当の理由」はなにか

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日本経済新聞では、以下のように報じています。

〜税務当局が「相当の理由」があると判断すれば特例として扱う。例えば、資金面で会計ソフトの導入が難しいなど幅広い理由を認める見込みだ。事前の申請も不要にする。
 特例は今も紙で社内手続きを進めている企業が念頭にある。取引先からメールで受け取った請求書データを専用フォルダで保存するなどして、税務当局が確認できるようにしておけばいいようにする。

「請求書データ管理、対応遅れの企業は紙も容認 政府検討」日本経済新聞 2022年11月24日 20:15 、(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA227KJ0S2A121C2000000/)。

相当の理由の例は、資金面で会計ソフトの導入が難しいことです。
デジタル人材がいないことをしきりに新聞報道にてされるので、人がいないことも理由になるかもしれません。
お金がないが理由であれば、かなりの場合が認められます。

相当の理由に該当しないことの判断が広すぎれば、何でも当てはまりますね。
特に罰則などなければ、どこに強制力があるのでしょうか。

紙保存を認める対象を売上などで区切るか

対象の個人や企業を売上で区切るのでしょうか。
区切るのであれば、1000万円、5000万円、1億円のどこに基準をおくのでしょうか。

対になるインボイス制度を考えれば、1億円を基準に置く可能性があります。
また、幅を広げすぎという批判を受けることを考えれば、もともとひとつの基準にしていた1000万円というものを使うことも考えられます。

紙保存は、いつまで続けていいか

相当の理由によって紙保存ができるのはいつまででしょうか。

もう2年なのでしょうか。それとも、ずっと紙保存をしていいのでしょうか。
いつか対応するのであれば、宥恕期間の延長のようにも見られます。

勘案してゆるくすると、対応できない方々への助けにはなります。
同時に、なんのための法律なのか。形骸化につながる印象もあります。

データ保存の必要性は変わらないが、罰則は?

紙保存をすると同時に、受け取ったデータは保管をするように求めています。
データ保管の重要性は変わらないといえます。

ただ、罰則がどこまであるのでしょう。
紙はあってデータはない経費を、もともとは証拠書類がないものとして認めないこと、すぐにではないが青色申告を認めないことまでつながる話がありました。

100枚の紙だけ保存して、そのうちデータが10くらいだけだった場合、なにか罰則を受けるのでしょうか。
線引が、不明瞭になりそうです。

もともとアメがはっきりしない

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次回以降の大きな改正があっても、税務行政の信頼はかなり低くなっている印象です。
1000万円を基準値にして、なんとなく当初の整合性を無難におさめるのでしょうか

もともと、追徴課税を割合を下げるという程度のアメでした。
青色申告の取り消しはほとんどないという通達が出ているので、ムチがどんどん下がります。
財務省が嫌がるのでしょうが、減税など掲げる方が関係業者も当人もモチベーションが出たのではないでしょうか。

いずれにせよ、2022年12月半ばの続報待ちですね。
上記の売上基準はあくまで予想ですので、当たらくてもクレームしないでくださいね(笑)

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