こんにちは!今回は、日本の企業にとって重要なテーマである「インボイス制度の経過措置」について、税理士が解説します。インボイス制度とは、消費税の納税義務者について適格請求書を発行できる制度です。これにより、消費税で概算でされていた仕入税額控除がしっかりと計算できるようになります。
これまで、免税事業者であっても不利なくされていた消費税の制度において、免税事業者から受けた商品やサービスの仕入税額控除ができなくなることから、締め出しという声や反発の意見が出ていました。もともと受けていた特典部分がなくなるだけで、決して低く扱っているわけではないのですが、負担感があるのでしょう。
そういった負担感に対して、経過措置が取られることとなりました。今回はその経過措置について詳しく解説します。知っておくべきポイントを押さえて、スムーズな対応を心がけましょう!
インボイス制度導入後の仕入税額控除について
インボイス制度導入後、仕入税額控除については、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れについては原則として適用を受けられなくなります。しかしながら、6年間の経過措置が設けられており、免税事業者等からの仕入れに対しても一定割合の仕入税額控除が可能です。
控除の割合
免税事業者からの仕入れにつき80%控除可能
免税事業者からの仕入れにつき50%控除可能
6年間の経過措置が設けられた理由
6年間の経過措置が設けられた主な理由は、インボイス制度の実施によって、免税事業者や消費者を含め、多くの事業者に影響があることからです。特に、適格請求書発行事業者以外からの仕入れによる仕入税額が、制度導入前と比べて見直しを強いられることで、免税事業者の財務上の負担が大きくなる可能性があります。
そのため、制度開始から6年間は、免税事業者も含め、適格請求書発行事業者以外の事業者からの課税仕入れでも、一定割合の控除が認められるという経過措置が設けられました。免税事業者が排除される感覚をなくしたいということです。これにより、事業者の負担を軽減し、円滑な経理処理ができるようになりました。ただし、免税事業者がインボイス制度に参加する場合の注意点もあるため、しっかりと理解しておく必要があります。
なお、適格請求書発行について、軽減税率が提言されたときから、含まれることは検討されていました。実務上、複数税率になった場合に、適格請求書がなければ処理ができないという専門家の提言があったからです。8%の軽減税率があった方がよかったかは、この話を聞くと迷ってしまうところです。
適格請求書発行事業者の登録方法
適格請求書発行事業者になるためには、納税地を所轄する税務署長に登録申請書を提出する必要があります。登録申請書は、国税庁のホームページからダウンロードできます。提出方法については、e-Taxによる提出や郵送による提出がありますが、e-Taxによる提出をおすすめします。登録に必要な情報には、法人名や所在地、電話番号などがあります。
制度開始前に準備すべきこと
インボイス制度が2023年10月1日に開始される前に、事業者は準備をする必要があります。適格請求書発行事業者になる場合は、国税庁への登録申請が必要です。登録手続きの期限は、2023年3月31日までで早めに準備する必要があると案内されていましたが、最終的には2023年9月末までに申請すれば10月1日から登録を受けられるとの取り扱い予定です。ただ、登録しても番号の到着まで時間がかかることがありますので、それを見越して余裕を持っておきましょう。
また、区分記載請求書が必要とされるため、事業者は早めに準備をすることが重要です。さらに、インボイス制度導入に伴い、内部統制の見直しが必要とされます。具体的には、請求書の発行や保存などのプロセスが変わるため、システムやプロセスの見直しが必要となります。適格請求書の番号を確認をどうするかについて、税理士と相談してほしいところです。
このような準備を進めることで、インボイス制度の導入にスムーズに対応することができます。
免税事業者も影響を受ける点
インボイス制度の影響は、課税事業者だけでなく、免税事業者にも及びます。制度開始後、免税事業者から課税事業者になる場合、今まで申告や納付をする必要がなかった消費税の管理が必要になります。また、制度開始によって、免税事業者から課税事業者になる企業にとっては、売上高や取引先の減少といった悪影響を被る可能性があります。しかしながら、制度開始から6年間の経過措置が設けられているため、免税事業者にも対応期間が与えられます。しかし、免税事業者にとっても、制度移行に向けた準備が必要となります。
免税事業者がインボイス登録を行う場合の特例(2割特例)
免税事業者もインボイス制度に登録する場合、特例があることを知っておく必要があります。この特例は、「2割特例」と呼ばれ、インボイス制度を契機として課税事業者になった場合に適用されます。そのため、以前は免税であった消費税が、2割に緩和されることになります。2割特例の適用に当たっては、簡易課税制度のような事前の届出は必要なく、消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記することで適用を受けることができます。
また、2割特例を適用できる期間は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間となります。
適用には、以下の者が対象です。
対象者
- 免税事業者がインボイス発行事業者の登録を受け、登録日から課税事業者となる者
- 免税事業者が課税事業者選択届出書を提出した上で登録を受けてインボイス発行事業者となる者
したがって、インボイス発行事業者の登録を受けていない場合には、2割特例の対象とはなりません。
仕入れ先が免税事業者の場合の対応方法
インボイス制度導入後、仕入れ先が免税事業者である場合の対応方法を考える必要があります。特に、免税事業者はインボイスの発行をしない場合があり、適格請求書を受け取れないことがあります。その場合は、先程のとおり、制度開始後6年間の経過措置を利用して、仕入税額控除を一定割合受けることができます。
ただし、前提条件として免税事業者からの課税仕入れに限定されますので注意が必要です。また、利用するには一定の手続きが必要となります。たとえば、免税事業者に対して登録番号の通知が必要であり、それに伴い免税事業者への課税仕入れがないことが確認されている必要があります。このような細かな点にも注意を払い、適切な対応を行っていくことが大切です。
インボイス制度と一人親方の対策
一人親方などの職人に仕事を依頼している事業者にとっては、インボイス制度の影響は避けられません。消費税法で、免税事業者と同じ扱いになっているかを確認しましょう。免税事業者であれば、経過措置の特例に該当することができます。
免税事業者のままでいたほうがいいのか、課税事業者になった方がいいのかは、計算が必要です。消費税の日々の記帳や消費税の申告が必要になることと、2割特例で受けられる消費税分の収入を比較することになるでしょう。税理士のアドバイスを仰ぎながら、インボイス制度にうまく対応し、事業の継続につなげることが重要です。