節税として認められていたものが、租税回避として最終的に適用できなくなっている例があります。
ひとつの例は、個人が海外の中古建物を買って、不動産所得と給与所得をぶつけて税金を減らす方法です。
すでにフタがされていますが、ご紹介してみます。
過去の節税方法、海外中古建物の減価償却
木造の建物について、減価償却資産の年数を22年としてみます。
日本は中古市場があまり活況ではありません。
一方海外では中古建物市場が活況です。
そして、建物を実際に使える年数も違いますね。
日本の住宅は、平均約30年。
一方、イギリスは平均約77年、アメリカは平均約55年使っています。
中古物件の減価償却資産の年数を簡単に算定する方法として、もともとの20%というやり方があります。
実際に30年経った木造の建物だと、法定対応年数22年x20%=4.4年→4年と計算できますね。
日本の場合の売買価格は、減価償却の通常年数に従うので、おおよそゼロに近いです。
でも、アメリカやイギリスは、30年経過しても、それから25〜47年ほど使います。
市場価格も、それに見合った金額になるでしょう。
仮に1億円の建物を購入しても、4年で減価償却が完了します。
それなのに、平均的には4年経過しても21〜43年も使えてしまう状態です。
4年間の所得圧縮につかえていたわけです。
趣旨に違反
平成27年の会計監査院の報告の指摘の一部は、以下のようなものです。
- 海外の建物の実際の使用期間に適合していない
- 所得圧縮のための投資が散見される
海外投資が通常sれないようなこととは言い難いですが、制度上減価の計算として不適当と判断されたものです。
改正可能性も、長期の計画に織り込んで
短期の税額を減らすことにはフタをされてしまったのが海外不動産投資の現状です。
海外の資産について、短期で売買する場合には、損出しだけでなく為替リスクも出てきます。
上手に回収し、どのような為替の動きになるか、動いた場合にどうするかも含めて、広い年数範囲で損益を考えておきたいものです。
また、今回のように、所得を圧縮することを目的としていた人は、途中で売る決断を迫られることになりました。
こういった節税策を構図するのが悪いというわけでなく、「途中で改正されるという可能性も考えて投資をすべき」といういい例ですね。